婚活で10人会っても、ピンとくる人に出会えない。
条件は悪くないのに、心が動かない。「いい人なんだけど、なんか違う」で毎回終わる——そんな経験、ありませんか?
多くの人は、これを相手のせいにします。「この市場にいる人のレベルが低い」「自分に合う人がいない」と嘆く。僕も以前はそう思っていました。
でも最近、別の可能性に気づいたんです。
婚活というシステムそのものが、人の魅力を消すように設計されている——そんな気がしてきました。
プロフィールに書いた瞬間、人は「量産型」になる
例えば、プロフィール欄に「趣味:映画鑑賞」と書いた瞬間、その人は世界で一番つまらない量産型の人間に見えてきます。
「休日の過ごし方:友達とカフェ巡り」も同じ。ありきたりすぎる。「好きな食べ物:なんでも」は特に最悪で、雑草でも喜んで食べるのか?と思ってしまう。
どれも本人の本当の姿とは関係ありません。こっちがプロフィール文を読んで、勝手に抱いた感想にすぎない。
ただ、婚活の書式に圧縮された瞬間に、その人の固有性が全部死んでしまう。これが本当の問題なんです。
もし同じ人が、友達と映画の話で熱くなって、好きな監督を語って、なぜこのシーンで泣いたかを説明している瞬間は、最高に魅力的なはずです。でも婚活のプロフィールには、その熱量は一行も書けない。「映画鑑賞」の4文字に変換されて、世界中の10万人と同じ属性になる。
ちなみに僕は「ガタカ」と「インセプション」が好きです。
恋愛と真逆の順番で進んでいく
婚活は、人間を書式に圧縮するだけじゃありません。プロセス自体が、恋愛の仕組みと真逆の順番で進んでいく——ここにも問題があります。
人が誰かを好きになる瞬間を、思い出してみてください。
最初に反応するのは、顔、声、仕草、笑い方、匂い、話すときの間合い。こういう予測不能な一瞬に心が動いて、後から「そういえばあの人、何してる人なんだろう」と条件を調べる。これが人間の脳の自然な順番です。
婚活は、この順番を逆走させます。
まず年収と職業と年齢で絞り込む。条件をクリアした相手の写真を見る。プロフィールを読む。気になったらメッセージを送る。返信が来たら、ようやく会う。
会う前から、お互いの情報をほぼ把握している状態。
恋愛の発火点が、事前に塞がれている
恋愛感情の発火には、2つの回路があると思っています。
一つは、予測不能な一瞬に反応する回路。もう一つは、時間をかけて蓄積されていく回路。人はどちらかで、あるいは両方で、誰かを好きになる。
婚活のプロセスは、この両方と相性が悪い。
プロフィールに全情報が書いてある時点で、予測不能な要素は消えている。時間をかけて会ってはいけない暗黙のルールがあるから、蓄積も起きにくい。
婚活は、恋愛の発火点を事前に両方塞いでしまう仕組みになっている。
だから婚活で全員ピンとこないのは、相手のせいじゃありません。意志の問題でもない。脳の回路を逆走させている以上、ピンとくる方がむしろ奇跡なんです。
意外性を排除すると、魅力も消える
恋愛感情というのは、意外性から生まれます。
知らなかった一面を見たとき。予想を超えた瞬間を共有したとき。心が動く。
婚活は、その意外性を排除するシステムです。会う前から相手の職業・年収・趣味・休日の過ごし方を全部知っている。意外性がない状態で会うから、会っても何も起きない。
書面で知った相手を、書面通りに確認する作業になる。作業には、感動がない。
「万人受け仕様」だけが並ぶ場所
もう一つ、見逃せない問題があります。
婚活の場にいる人は、全員が「選ばれるため」に最適化されている。服装も、会話も、趣味の答え方も、万人受けする方向に調整されている。その結果、全員が似てくる。
尖った部分、変わった部分、偏愛、こだわり——全部が削られた「万人受け仕様の人間」だけが並んでいる。
でも、万人受け仕様の人間からは、誰も好きになれないんです。
人が人を好きになるのは、その人固有の変な部分、偏っている部分、他の人と違う部分に触れたとき。
婚活は、その「他と違う部分」を見せないことがルールになっている。ルールを守れば守るほど、魅力が消える。ルールを破ると「常識がない人」と判定される。どう転んでも詰んでいる。
あなたのせいでも、相手のせいでもない
婚活で出会った相手が魅力的に見えないのは、あなたのせいでも相手のせいでもありません。
書式に圧縮された情報と、逆走させられた順番と、万人受けに削られた姿。この3つが重なった場所で、魅力が残る余地がない——ただそれだけのことです。
じゃあ、婚活をやめた方がいいのか。そういう話でもないと思います。
結婚したいなら、婚活は一つの手段として使っていい。ただ、使い方は変えた方がいい。
書式を捨てて、生身の相手を見る
婚活の情報を、相手を判定するために使うんじゃなく、「会うきっかけ」として使う。
プロフィールで判断せず、会ってから婚活の情報を全部忘れる。年収も職業も趣味欄も、一旦全部捨てる。目の前の人の笑い方、話すときの間、店員への接し方——そういう予測不能な一瞬だけを見る。
書式を捨てて、生身の相手を見たときに、初めて人間の恋愛回路がオンになります。
婚活の失敗の大半は、相手の問題じゃない。システムに圧縮された情報を、本物だと思い込んで見ていることが、本当の問題なんだと思います。
プロフィールは、その人じゃない
Dine Tokyoは、条件で相手をスクリーニングする場所ではありません。
少人数で食卓を囲んで、同じ時間を過ごして、相手の笑い方や話す間合いに触れてみる。プロフィールに圧縮される前の、生身の人間と会ってみる——そのために、この場をつくっています。
プロフィールは、その人じゃない。
そのことを覚えておくだけで、出会いは少しだけ、意味のある場所に変わるはずです。